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『OODA(ウーダ)危機管理と効率・達成を叶えるマネジメント』とPDCAの比較

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目次

 

情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)などのISO規格や品質管理など、様々な場面で使われるPDCAサイクル。1年単位でPDCAサイクルを回すこともあれば、3ヶ月単位でのPDCA(高速PDCAなんて呼ばれる)を回す手法もある。私が某外資系IT企業でISMS事務局長を5年務めていた際、毎年PDCAを1年単位で回して改善を繰り返すというマネジメントサイクルを実行していました。しかし、この変化の激しい時代においてこのPDCAのスピード感では対応が間に合わないとして、「OODA(ウーダ)」という意思決定法が代替手段として挙げられている本があったので今回紹介しますね。

 

「OODA(ウーダ)」は短時間、短期間のうちに意思決定し行動するというフレームワークで、アメリカ空軍パイロットのジョン・ボイド大佐が考え出したもの。考え方は決して目新しいものではないし、ふだん無意識のうちに実行していることもあるでしょう。しかし、改めて「OODA(ウーダ)」という意思決定法を学ぶことで危機管理やリスクマネジメントを考え直すきっかけになると思います。ちなみに危機管理に関する本は以前のブログでも紹介しています。

 

★『生き残った人の7つの習慣』登山とビジネスの危機管理を教えてくれる

『生き残った人の7つの習慣』登山とビジネスの危機管理を教えてくれる

 

 

前回は登山家の小西浩文さんの本でしたが、今回紹介するのは元日本航空機長である小林宏之さんの『OODA(ウーダ)危機管理と効率・達成を叶えるマネジメント』という本です。

 

 

『OODA(ウーダ)危機管理と効率・達成を叶えるマネジメント』

2020年1月31日 第一刷

著者 小林宏之

発行者 平野健一

発行所 株式会社徳間書店

 

 

さて、PDCAとOODAには以下のようなサイクルの違いがあります。

PDCA OODA

Plan(計画)

  ⬇️

Do(実行)

  ⬇️

Check(評価)

  ⬇️

Act(改善)

Observe(観察)

   ⬇️

Orient(状況判断)

   ⬇️

Decide(意思決定)

   ⬇️

Act(行動)

 

PDCAは「平時」におけるマネジメントサイクルであり、業務、品質を改善するために繰り返し行うのに対し、OODA は短時間、短期間の間に意思決定し行動します。アメリカ空軍の少佐が考えただけあって、OODAは戦場のような変化が極めて激しい時に適した考え方であり、「今更どうにもならない(Too Little Too Late)」という状態に陥らないためにもOODAという考え方をビジネスの現場でも採り入れよう、というのが本書で書かれています。

 

とにかくOODAは意思決定が早いため、1つのループ(OODAではループと呼ぶ)が完結するのが極めて早い。分単位、秒単位ということもあり、計画なんて立てている余裕なんてない状況下において、OODAはリスクマネジメント・危機管理における究極の意思決定ループでありアメリカのビジネス界ではOODAが浸透しつつあるようです。

 

一方、日本では稟議制度に代表されるように決定に時間がかかるし、名ばかりの肩書きだけで権限が与えられていないケースも多々見受けられるため意思決定に時間がかかる。散々Mtgに時間をかけながら最後は部長に相談しますとか、現場が一番理解しているはずのことを現場をよく理解していない人間が最終決定するなどよくあること。特に古い体質の大企業に多いように思います。そういった意味で、ケースバイケースではあるもののOODAは企業だけでなく起業家やフリーランスなど全て一人で意思決定しなければならない一個人で戦っている人間にとっても有効な考え方です。ただ、OODAは何度も言うように決して目新しいものではなく、本書に書かれているように、

 

観察(情報感度)

  🔻

状況判断

  🔻

意思決定(決断力)

  🔻

(果敢な)実行

 

という単純なループを磨いていくことで身に付けられます。

 

PDCAはある程度の時間をかけて螺旋状に改善を繰り返していく。OODAは失敗したら時間をかけずに再度観察から実行までを繰り返す。ポイントは決断力と実行力。そこにはもちろん本書のテーマである危機管理、危機意識が前提となる。

 

ちなみに、このブログを書いているのは2020年3月29日(日)。新型コロナウィルスの感染拡大が危ぶまれる中、小池都知事が28日、29日と外出の自粛要請を都民に出している。システム運用保守や一部の業務を除き、通常出社する必要のない業種も多い。マスクもせずに密閉された会議室で何人もの人間がふつうにしゃべっているところもある。しゃべりずらいのはわかるが新型コロナウィルス感染が拡大するかもという時に危機意識は無いのか?と思ってしまう(苦笑)

 

それはともかくとして、そのくらいビジネスの現場において危機意識の無い人というのがいるというのも事実。では、「OODA」がどういったものなのか1つ1つのフェーズを簡単に見ていきたいと思いますがポイントのみ触れますので詳細は本書をぜひご一読ください。

 

Observe(観察)

虫の眼、鳥の眼、魚の眼、コウモリの眼、心の眼をバランスよく使うこと。そして、メディアやSNS等で得られた情報が全てではなく、どこまでその情報が正しいかも不明であるため、観察力を高めるためも三現主義を持つこと。

三現主義とは、「現場」に出向き、「現物」に直接触れ、「現実」を捉えるということ。5つの眼については非常に面白い視点が書かれていますので本書でご確認ください。

 

Orient(状況判断)

的確な状況判断を行うためは正確な情報が必要。そのために情報力を身につける必要があり、情報力には「情報収集力」「情報処理力」「情報編集力」の3つがある。「情報収集力」は常にアンテナを立てておきアンテナの感度を高くすることによって上げることができる。「情報処理力」は一次情報(自分で確認したり体験したもの)であるかや情報の取捨選択の基準を持つことが必要。「情報編集力」は自分で収集、分析した情報を組み合わせたりして自分が納得のいく結論を導き出すことで上がり、今の時代一番重要。

 

Decide(意思決定)

意思決定とは「行動」するということ。リーダーは「決断」するためにOODAによる意思決定法を身につけておく。

 

Act(行動)

悲観的に準備し楽観的に対応すること。決めたことは必ず実行すること。最後は行動することにより結果が決まる。

 

本書は元日本航空貴重である小林宏之さんのパイロット時代の話や世界の飛行機事故にまつわる事例が盛り込まれ、危機を乗り越えたリーダーの話やリーダーに求められる条件など興味深い内容も書かれています。リスクマネジメント、危機管理に関わる方におすすめします。OODAはビジネスの場面でも役に立つと思いますので、日頃からOODAを意識して行動してみてはいかがでしょうか。

 

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